ウミウシの移動手段(浮遊偏)

 ウミウシはどのように移動すると思いますか?

 多くの方が「地を這って移動する」と答えると思います。
 ウミウシに詳しい方だと更に、「ウミコチョウの仲間はハネのような部分を羽ばたかせて飛ぶように移動する」と答えるかもしれません。
 どちらも正解ですよね。ウミコチョウの仲間以外にも体の一部を羽ばたかせて泳ぐウミウシはいます。また、「ヒオドシユビウミウシ」は体をくねらせて魚のように泳ぎます。

 その他、私が知っている移動方法では「流れに身をまかせて浮遊する」というのがあります。泳ぐのではなく「浮遊」するのです。

 今までにいろいろな浮遊シーンを目撃してきました。
 以下にその一部のシーンを簡単に紹介しますね。

 ●ミノウミウシの仲間を石の上に乗せて撮影しているとき、ミノを逆立たせたと思ったら次の瞬間、体を丸めてふわっと浮き上がりそのまま海中を浮遊しました。

 ●マリンサービスみやもとの栗原さんと、ナイトダイビングで「マダラウミフクロウ」を探していると、「クロシタナシウミウシ」が緩やかな流れ(ダウンカレント)に乗って転がるように浮遊移動してきました。我々で一生懸命着底させようとしたが、自らの意思で拒むようになかなか着底しませんでした。

 ●フィンであおられて浮かび上がったクロヘリアメフラシが、外套部を飛行機の翼のように左右に広げて浮遊状態になりました。

 ●奄美大島で初めて見た「ケラマコネコウミウシ」の場合、はじめは普通に地を這っていたのですが、しつこく撮影していると、頭部を持ち上げ天を仰いだと思ったら浮遊しました。正確には浮遊したところを確認していないので「浮遊したようです」が正しいです。
 そのときは、以前から見てみたい思っていた「ケラマコネコウミウシ」に出会えて、かなり興奮気味に撮影してました。
 その興奮状態が伝わりプレッシャーを受けたのか、「ケラマコネコウミウシ」は頭部を持ち上げユラユラとゆれはじめました。
 その状況を見て、いままでの経験から「やばっ!浮遊する!!」という思いが頭の中に浮かび上がります。次の瞬間には顔を引きつかせていました。すると水中マスクには海水がジャバジャバと入ってきました。両手はカメラでふさがってます・・・なんとかシャッターを押して、マスククリアした後にその場所を見ても「ケラマコネコウミウシ」は居ませんでした。
 恐らく浮遊してどこかに行ってしまったのだと思います。

 ●以前テレビ番組で見たシーンもなかなか衝撃的でした。
 それは、「Janolusの仲間」が別の肉食のウミウシ(すいません、どんなのだったか忘れました たしかキセワタガイ系だったと思うのですが)に砂地で追いかけられているシーンです。
 「ああっ!つかまる!!」と思った瞬間です。「Janolusの仲間」が体を丸めて「ふわっと」いう感じで浮かび上がったのです。そして緩やかな流れに乗って移動し、難を逃れました。
 ここで、捕食者の方も「ふわっと」浮かび上がって壮絶な空中(海中?)戦を繰り広げたら、私はその場でひっくり返っていたかもしれませんが、残念ながらそういうことにはなりませんでした。
 浮遊移動で難を逃れた「Janolusの仲間」の行動も凄かったのですが、その後の捕食者の行動も興味深かったです。
 追いかけていた相手が突然目の前から居なくなってしまい、どうしてよいのかわからないような状態でした。
 はたから見ていれば「おいおい、相手は浮遊していなくなっちゃったよ」と言いたいところなのですが、そのときの捕食者の様子は、突然、線路が無くなってしまった列車のように止まってしまったのです(「列車だったら脱線だよ」という突っ込みはなしで・・)。

 貝の仲間で(ウミウシも広い意味ではそうなのですが)、別の種の貝を食べる肉食種がいます。
 その捕食者が相手の貝を追いかける際に目印となるのは、相手の貝が出す粘液だそうです。
 また、貝の仲間には自分の家(住む場所)を持っていて、そこからかなりの距離を出かけていっても、ちゃんと戻ってくるそうです。
 これも、自分が出した粘液をたどって戻ってくるという実験結果が出ているようです。
 (このへんの話は「貝のミラクル 東海大学出版会」に詳しく書いてあるので興味のある人は読んでみて下さいね。)
 テレビ映像で見たウミウシの捕食シーンも同じ事が言えるのではないかと思います。
 捕食者が相手(餌)の出す粘液をたどって追撃(チェイス)します。そして追われている「Janolusの仲間」が地を離れたところで、粘液が途切れ追跡が不可能となる。
 実際、ウミウシが這った後には粘液のようなものが確認できます。

 このように考えると、浮遊というのは移動手段でもあるし、捕食者から逃げる手段でもあるようですね。


HOME

ご意見、ご感想はこちらまで